
私の指導方針について
私は子どもの頃、とても神経質な性格でした。
まだ起きてもいないことを考えては不安になり、一人で落ち込むことがよくありました。
そんな私に、母はいつも同じような言葉をかけてくれました。
「大丈夫だよ。」
お年玉をなくして落ち込んだ時も、
「お金で済んだなら良かったじゃない。」
事故で怪我をした時も、
「命があって良かった。」
「誰かを怪我させなくて良かった。」
失敗をしても、落ち込むことがあっても、母はいつも違う角度から物事を見せてくれました。
ある時、母にこんなことを言われました。
「つよし、杞憂(きゆう)って知ってる?」
杞憂とは、中国の杞という国の人が、
「いつか空が落ちてくるんじゃないか」
と心配していたことから生まれた言葉です。
そして母はこう言いました。
「つよしが今心配していることは、たぶん起こらないよ。」
私は子どもの頃から、悪い方向へ悪い方向へ考えてしまう癖がありました。
でも母は、そのたびに良い方向へ考えられるような言葉をかけてくれました。
今思うと、母自身も不安だったはずです。
母は21歳で私を産み、すぐにシングルマザーになりました。
母一人、子一人。
経済的にも精神的にも、決して楽ではなかったと思います。
それでも私の前では弱音を吐かず、いつも私を励ましてくれました。
幼い私が不安に押しつぶされないように。
自信を失わないように。
必死に言葉をかけ続けてくれていたのだと思います。
大人になった今でも、私は時々ネガティブに考えてしまうことがあります。
これはきっと性格なので、完全には変わらないのかもしれません。
それでも、生徒や仲間と接するときは、自然と母と同じような言葉を返しています。
「大丈夫。」
「そんなに心配しなくていいよ。」
「失敗しても大したことないよ。」
「まずはやってみよう。」
気付けば、母が私にしてくれたことを、そのまま生徒たちにしているのです。
そして不思議なことに、そのときは強くなっている私がいるのです。
私はダンスの先生ですが、本当に伝えたいのは技術だけではありません。
ブレイキンを通して、
「失敗しても大丈夫。」
「挑戦しても大丈夫。」
「自分は思っているよりできる。」
そう思えるようになってほしいのです。
なぜなら、私自身が母の言葉に何度も救われてきたからです。
だからアビリティでは、できないことを責めることはありません。
失敗した時ほど励まし、挑戦したことそのものを認めることを大切にしています。
そして何より嬉しいのは、その想いが次の世代へ受け継がれていることです。
アビリティを設立して14年。
かつて生徒だった子どもたちが講師となり、今度は自分たちの言葉で新しい生徒たちを支えています。
生徒が講師となり、その講師がまた次の生徒を育てていく。
技術だけでなく、人を励まし、人を信じる文化が繋がっていることを誇りに思います。
もし不安な気持ちを抱えている子がいたら、私は母が私にしてくれたように言いたいと思います。
「大丈夫。」
その一言が、人を前に進ませることがあると知っているからです。