
「感謝って大切。」
きっと誰もが一度は聞いたことのある言葉です。
もちろん私も、「そうですよね」と思っていました。
でも、感謝の本当の意味を真剣に考えた出来事があります。
それは、私が非常勤で学童保育で働いていた頃のことです。
本当に素晴らしい職場で、毎日たくさんの個性的な小学生に囲まれていました。
癒されることもあれば、思い通りにいかずヤキモキすることもあります。
子どもたちは片付けをしてくれない。
友達を泣かせてしまう。
時には学童を飛び出してしまうこともありました。
そんなある日、主任の先生に声をかけられました。
「つよし先生。子どもたちが片付けをしてくれた時や、今日は友達と仲良く遊べた時って、何か声をかけたことある?」
「いや、ないです。」
「どうして?」
「片付けるのも、友達と仲良くするのも当たり前だと思っていたので…。」
すると主任の先生は、優しくこう言いました。
「でも、その子にとって今日はすごい日なんだよ。」
「今日は片付けができた。友達とケンカせずに遊べた。それって、その子にとっては大きな成長なんだよ。」
「もしかしたら、お父さんやお母さん、学校の先生に何度も言われて、一生懸命頑張っているのかもしれない。」
「今の話を聞いてどう思う?」
その瞬間、ハッとしました。
「あっ……。」
「褒めてあげたいです。」
すると主任の先生は笑って、
「そうなんだよ。」
「片付けることは当たり前かもしれない。でも、その子にとっては今日できたことが大きな一歩なんだ。」
「その小さな頑張りや成長に気づいて、『ありがとう』『頑張ったね』と伝えられる先生がいると、子どもはもっと成長していく。そして、つよし先生の話もきっと聞いてくれるようになるよ。」
この言葉は、今でも忘れられません。
それから私は、子どもたちをもっとよく観察するようになりました。
「今日は靴を揃えられた。」
「今日は最後まで座って話を聞けた。」
「今日は友達に優しくできた。」
以前なら見過ごしていた小さな変化が、たくさん見えるようになりました。
そして、その一つひとつに、
「ありがとう。」
「頑張ったね。」
そう声をかけるようになりました。
すると不思議なことに、子どもたちとの距離はどんどん近くなり、私の話にも耳を傾けてくれるようになったのです。
感謝とは、特別なことに対してするものではありません。
「当たり前」の中にある、小さな成長や努力に気づくこと。
その気づきを言葉にして伝えること。
私はそれこそが、本当の感謝なのだと思っています。
だから今日も、誰かの小さな一歩に気づける人でありたい。
そして、その一歩に心から「ありがとう」と伝えられる人でありたいと思います。